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【MBA書籍まとめ】経営戦略 第1章 事業経済性の活用

書籍「グロービス MBA経営戦略」の第1章 事業経済性の活用についてのまとめ記事です。

 

 

 

基本的にこちらの書籍のまとめです。

 

理論的なことはより理解しやすい表現に書き換え、文章量も最低限に留めました。

 

こちらの記事をお読みいただいて 本の内容を理解いただくもよし、

事例を含むより詳しい内容を知りたい方は購入して勉強いただくもよし。

 

便利に使ってやってください!

 

ではでは、以降がまとめ記事になります。

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ビジネスは突き詰めれば、利益(売上-費用)を上げながら成長を果たすことを目的である。

 

その過程でさまざまな競争が生じるが、どれだけ相手に対して有利なポジションを取れるかが、高い収益性や成長性を実現するうえで非常に重要となる。

いわゆるポジショニング論である。

 

そのカギとなるのはコスト。

コストが競争相手よりも低い場合と高い場合とでは、当然戦い方は異なる。

事業経済性を正しく理解し、業界分析や事業構造分析などを的確に行う必要がある。

 

また、定石ともいえる戦略の方向性を知っておくことも重要である。

 

 

 

1.典型的な事業経済性

事業が競合に対して優位な立場に立てるか(競争優位を構築できるか)を分析する上で、最初に理解しなくてはならないのが事業経済性。

 

事業経済性とはコスト低減のメカニズムのこと。

理解するだけではなく、自社や他社がそれを活用できているかまで把握する必要がある。

 

複数の企業が似たビジネスを展開しているとき、コストの低いほうが競争優位を築きやすい。

それだけ顧客に低価格を提示できる可能性が高まり、低コストで競合並みの価格を実現できれば収益性が向上する。

 

さらには得られた収益を次の投資や、競合との差別化のための原資として活用できる。

 

事業経済性には多くのものがあるが、

 

・規模の経済性
・習熟の経済性(経験曲線)
・範囲の経済性
・密度の経済性
・ネットワークの経済性

 

の5つについては特に理解しておきたい。

 

 

 

(1)規模の経済性

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規模の経済性とは、規模(一般には売上高)が増すと、製品1単位当たりの製造コストや提供コストが低減すること。

その主原因は固定費の分散である。

freeway-keiri.com

 

規模の経済性が強く働くのが製薬業界。

製薬業界で特に重視される固定費は研究開発費である。

1つの新薬を開発するには、近年では数百億円から1000億円ともいわれる莫大な先行投資が必要。

 

重要なのは、売上の大小に関わらず一つの薬を開発する研究開発費は変わらないことである。
売上が上がれば上がるほど、固定費である研究開発費が分散される。

nomad-salaryman.com 

 

 

 

規模の経済性は、狭義には固定費の分散による単位当たりコストの低減を指す。
広義にはバイイングパワー向上による仕入コストの低減を指す。

kotobank.jp

 

家電販売ではヤマダ電機がその圧倒的な販売量を武器に、メーカーから多額の販売リベートを引き出している。

ヤマダ電機ではまず商品を売ってしまい、その後販売実績に見合う多額の販売リベートをメーカーに要求する仕組み。

規模に裏付けられたバイイングパワーを行使することで、圧倒的に安い仕入価格を享受している。

 

 

規模の経済性について3つの注意点がある。

 

①同じ固定費でも、全社や事業部等の広い範囲で共有できる固定費と、個別の店舗など狭い範囲での固定費では意味合いが異なる

 

ファミリーレストラン事業は、かつてセントラルキッチン方式を導入したり、広告投資を積極的に行ったりして、本来規模の経済性が効きにくかったレストラン業界を、効きやすい業界へと変えた。

kotobank.jp

 

一方で、全社やエリアで共有できる固定費以上に、個店レベルの固定費が占める割合は依然として大きい。

たとえば、店舗の賃借料や人件費など。

全社的な規模(店数)を増やしても、個店の固定費は変化しない点に留意が必要である。

 

 

②規模の経済性による固定費の分散と、稼働率の上昇による単位当たり固定費の低減は異なる。

潜在的に規模の経済性が効く企業であっても、稼働率が低い状態では単位当たりの固定費の分散は実現できない

 

この罠に落ちたのが、かつてのすかいらーく。

同社は全社的な規模を拡大すべく新規エリアへの出店を加速したが、新規店舗は軒並み稼働率が低く、同社の長年の赤字の原因となった。

 

 

③しばしば規模の不経済性が起こる

規模化によるコスト低減以上に、コミュニケーションの手間が増すことで、かえって単位当たりのコストが増すことがある。

米自動車メーカーのGMはかつて、車種が多いことに加え、内部の調整コストが高かったこともあり、企業規模では下回るフォードより同じ車格の乗用車の製造コストが高くついていた。

日本の大手自動車メーカーでは、これを避けるべく、数車種のプラットフォームを共有化するなどの工夫をして、徹底したコストダウンを図った。

 

 

 

(2)習熟の経済性

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経験曲線(ラーニングカーブ)とは、コンサルティング会社のボストン コンサルティング グループ(BCG)が発見したコスト低減のメカニズム。
累積生産量が増すほど単位当たりのコストが減少することである。

 

特に製造業において顕著に見られる現象。
累積の生産量が増えるに従って、過去の経験や溜まった知見を反映して生産プロセスの効率化が進み、歩留まりや生産性が高くなることが要因。


通常、累積生産量の多い会社は上位企業であり、新技術の採用に積極的であることも生産性を高める要因。

 

経験曲線の傾きは、業界ごとに異なる。

ナレッジの蓄積や学習に熱心な会社は経験曲線の勾配が急になるが、そうでない会社では勾配は緩やかになる。

 

80年代頃までは、日本の製造業の経験曲線の勾配が概ね急であった。

一方で生産技術の改善にあまり力を入れていなかったアメリカの製造業の経験曲線は緩やかであった。

 

日本企業は、特に擦り合わせ型製品(機能とパーツが1対1で対応しておらず、きめ細かな擦り合わせが必要とされる製品)の生産において強みを持つとされる。

この領域での経験曲線の傾きは、丁寧な学習や暗黙知によるところが大きく、一朝一夕に他社が逆転するのは難しい。

 

経験曲線においては、2つの注意が必要。

 

①経験曲線は改善や改良の積み重ねの結果であるため、劇的なイノベーションが起きて一気に「ゲームのルールが変わってしまう」場合

電気自動車が普及し、製品の構造がモジュール型(パソコンのように機能とパーツが1対1で対応しており、組み立てが単純な製品構造)に変わってしまうと、それまでの日本企業の強みが生きず、コスト競争力が失われてしまう。 

 

②習熟によるコスト低減はいつかは終わる

同じペースでコスト低減が続くわけではなく、どこかの段階で曲線がフラットになる時点がくる。

コモディティ化が劇的に進んだ製品では、誰が作ってもコストが同じという状態になる。

どの段階で経験曲線が効きにくくなるかを予測することも、戦略を構想する上で重要。

kotobank.jp

 

 

 

(3)範囲の経済性

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範囲の経済性は、異なる事業間における資源の共有によるコスト低減のこと。

※規模の経済性が同じ事業における固定費の分散(あるいは仕入れにおける強いバイイングパワー)を意味するので違いに注意

 

範囲の経済性は、シナジーとほぼ同義。

シナジーは、「1+1が3になる」と表現されることがある。

一方範囲の経済性は、「1と1のコストを足しても1.5のコストにしかならない」と言い換えられる。

 

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経営学者のアンゾフはシナジーを分類分けしており、コスト共有を強く意識して分類を行っている。

GE(ゼネラル・エレクトリック)はリーダー育成のノウハウが卓越している。

これは同社の中核事業である重電事業だけでなく、その他の事業にも展開可能。

 

セブン-イレブンを核とするセブン&アイ・グループについては、流通業で購買を共有できることで、大きなバイイングパワーを生み出している。

 

 

範囲の経済性の効く度合いは、多角化を考える際に非常に重要なポイントとなる。

ただし、本当に経営資源やプロセスを共有できるか、事前にしっかり検討する必要がある。

ヤクルト本社は、商社と組んで、同社の強みでもあるセールスレディに健康器具のカタログを持たせ、範囲の経済性を追求しようとした。

しかし、あまりの商材特性の違いに効果的なセールスを行うことができず、チャレンジはうまくいかなかった。 

 

 

 

(4)密度の経済性

店舗展開や物流を行うサービス業においては、店舗や配送センターが高密度に配置されているほうが輸送コストの節約になる。

 

また店舗や配送センターの施設そのものが広告媒体になり、広告投資が少なくて済む効果が期待できる。
これが密度の経済性である。

 

店舗の場合は、密度が高いほど顧客アクセスの利便性向上にもつながる。

セブン-イレブンはまさにこの密度の経済性を活かした企業事例。

同社の出店形態は「ドミナント方式」と言われ、店舗を集中させることで密度の経済性を効かせるだけでなく、フラ

ンチャイジーへのスーパーバイザーの効率的訪問や、店舗間での競争意識向上なども意図している。

www.fc-mado.com

 

(5)ネットワークの経済性

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ネットワークの経済性とは、SNSや電子メール、電話などのサービスにおいて、利用者が増えれば増えるほど個々の利用者の利便性が増し、顧客獲得コストやサービス提供コストが低減すること。

 

サービス提供者から見ると、コストは利用者数Nに比例するが、利便性は利用者数Nの2乗に比例する。

 

ネットワークの経済性は特に、比較的安価にサービス基盤を提供しやすくスピード勝負となりやすいネットビジネスにおいて重視されている。

LINEはサービス開始の初期に500円のAmazonギフト券を10万人に配るというプロモーションを行ってダウンロード数を増やし、先発のアプリを一気に追い抜いた。 

 

 

 

(6)要素コスト

要素コストは企業のコスト低減に大きく影響する。

該当するのは、人件費の単価や家賃相場など。

1990年代のユニクロは通常の小売業からSPA(製造小売業)へという業態の大転換に加え、当時は人件費が極めて安かった中国で製造することで、高い利益率を実現した。

kotobank.jp

 

ただし、いたずらに要素コストを削減すればいいとわけではない。


飲食店の場合、多少家賃が高くても、通行人の目につきやすい1階のフロアに出店することのメリットは大きい。

また、海外ブランドの直営店があえて家賃の高い場所に出店して、ブランドイメージを訴求するケースもある。


租税が安い国・地域(オフショア)に本社機能を置き、社内の移転価格を調整したりすることで納める税金の額を下げているグローバル企業もある。

 

 

 

2.SCPモデルと5つの力分析

事業経済性を効かせることは大事だが、それだけで高い収益性が実現できるわけではない。

 

なぜこのような現象が起こるのか?

なぜある産業では有名企業が薄利だが、別の業界ではそれほどの苦労なく儲ける企業が存在するのか?

 

これを理解するためには、SCPモデルと5つの力分析を理解する必要がある。

 

 

 

SCPモデル

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企業のパフォーマンスは、企業の個別の行動だけではなく、企業の置かれた環境にも強く影響を受ける。

この考え方をSCPモデルという。

 

Sは業界構造(Structure)

Cは企業の行動(Conduct)

Pが業界のパフォーマンス(Performance)

 

SCPモデルでは、企業の収益性は、その企業が置かれた環境に左右される。

競争が激しく新規参入も容易など、業界が厳しい環境にあれば、製品開発やマーケティングがうまくとも、儲かりづらい。

逆に、競合が少なく業界の環境が厳しくなければ、企業活動に緩い部分があっても、それほど収益性は厳しくならない。

 

しかし、SCPの考え方は比較的古くからあったが、アカデミックな議論にとどまり、企業経営者が実務に用いられることはあまりなかった。

 

SCPモデルに代わり、実務に用いられる理解しやすいフレームワークを提供したのが、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーターである。

業界の収益性に影響を与える環境要因を5つ特定し、それを押さえたうえで、業界内で有利なポジションを取った企業が成功を収めるとした。

 

5つの要因を整理したものが「5つの力分析」であり、ポジションの取り方に言及したものが「3つの基本戦略」「戦略グループ」である。

 

 

5つの力分析

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ポーターの5つの力分析の骨子は、業界に留保される利益は、「業界の利益を削る」5つの要因によって定まるというもの。

 

業界の利益を削る力が強いほど業界に利益は溜まりにくくなり、その業界で企業が高い収益を上げるのは難しくなる。

 

①売り手の交渉力

売り手とは、自業界から見たときの供給業者(サプライヤー)。

売り手の交渉力が強いと、購買品に高値付けや価格転嫁をされやすくなり、自業界に残る利益は減る。

 

売り手の交渉力が強くなる状況として、
・売り手が寡占状態で買い手の選択肢が限定されている
・何らかの状況でスイッチングコストが高い(業者を変えるのに手間暇がかかる)
・売り手の業界が横並びで価格交渉の余地がない
・売り手の製品が自社業界に重要な意味を持つ
等が挙げられる。

 

 

②業界内での競争

市場規模に対して、似たような製品・サービスを提供する競合プレーヤーの数が多いほど競争は激化し、業界の利益が減じる傾向がある。

 

市場規模が縮小する際に競争が激化する要因として、企業は、
・設備や人員の稼働率を上げようとして価格競争に走る
・撤退が難しくて業界にとどまり続ける
ことが考えられる。

 

 

③買手の交渉力

自業界から見たときの顧客からの利益削減圧力のこと。

 

この力を検討する場合は、直接の取引先のみならず、その先の顧客も視野に入れる必要がある。
(メーカーから見た場合、卸だけではなく小売りや最終消費者についても検討する)

 

経済が成熟するに伴って買い手の交渉力が増す傾向が見られる。

 

その中でも、買い手の交渉力が増す要因として、

・製品が差別化されておらず、どこの製品を買っても問題がない

・他の製品にすぐにスイッチできる

・買い手のほうが企業規模が大きい

・買い手業界が寡占で特定の会社に売上げの多くを依存せざるをえない

等が挙げられる。

 


④新規参入の脅威

参入障壁が高ければ新規参入は難しく、競争が緩和される。

 

参入障壁の代表として、

・規制や特許

・多額の設備投資

・ブランド(ブランド構築までの投資額)

・流通チャネル(チャネル構築までの投資額)

・最大の参入障壁は業界の魅力度が低いこと

等が挙げられる。


規制などを別とすれば、結局は必要な投資額が巨大なほど、新規参入は起こりにくい。

 

 

⑤代替品の脅威

代替品とは、形態は違うが同じニーズを満たす製品・サービスのこと。

完全にニーズが同じでなくとも、一部のニーズが重なっていれば代替品と考えられる。

スマートフォンは、携帯電話でのコミュニケーションというニーズに関してはテレビの代替品ではないが、暇つぶしや情報収集というニーズを満たす点ではテレビと競合である。

USBメモリも、クラウドがさらに一般化すると根こそぎ代替されてしまう可能性が高い

 

 

 5つの力分析の留意点

①戦略立案に向けて意味のある業界の定義をすること

クールジャパンが叫ばれる昨今、業界分析を日本国内に閉じてしまうことは、成長の方向性を見誤る危険性をはらむ。

 

自社の置かれた状況を俯瞰的に眺め、

・どのような業界で自社は戦っているのか

・競争相手や顧客を相手に自分たちは商売をしているのか(したいのか)

をしっかり考えることが必要。

 

 
②脅威(自業界の利益が侵食される程度)を見極めること

5つの力のうち強いものが2つ以上あれば、収益を上げるのは簡単ではない。

3つ以上あればかなり厳しい業界と言える。

ただし、5つの力分析は優れた分析フレームワークだが、それだけで業界の魅力度は推し量れない。

強い力が複数あろうとも、それ以上の市場の成長性があれば、削られる以上に業界の利益総額が伸びることもあり得る。

 

 

③5つの力は分析に留まらず、自社や自業界を有利にする具体的アクションを考えてみること

ライバルとのM&Aは、業界内の競争を弱めるとともに、買い手や売り手に対する交渉力を増す結果につながることが多い。

 

常に一歩先のアクションを考えることが戦略的な思考力を高めることにつながる。

 

 

 

3.アドバンテージ・マトリックス

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アドバンテージ・マトリックスは事業経済性の中でも、特に規模の経済性が効くかどうかに強く着目したフレームワーク。


事業規模を横軸に、ROAを縦軸に取り、各企業をプロットした場合の傾向により、自社の戦略の方向性を見極めるためのものである。

kotobank.jp

 

(1)特化型事業

業界における戦略変数が複数存在し、しかも自社が勝てる事業領域を適切に選び、そこで自社ならではの強みを発揮できれば十分な収益を得られる事業である。

 

領域ごとに勝ち組が存在する雑誌出版や人材紹介サイトなどはこのタイプの事業である。

業界定義やセグメンテーションの巧拙が重要。

 

(2)規模型事業

業界の競争変数がコストと、それを裏付ける事業規模に大きく片寄っている事業。

 

製品が比較的単純で差別化は難しいが、開発・生産・広告などで規模の経済性が効く場合に、この傾向が顕著になる。

 

具体的には、コスト以外の要素で差別化しにくい鉄鋼などが該当する。

日本にはかつて高炉メーカーが5社あったが、グローバル競争が激化するなかで統合による規模化が進み、2017年現在は3社(2グループ)に集約されている。

 

 

(3)分散型事業

業界内に大企業が少なく、また規模化によるコスト低減が必ずしも競争上重要ではない事業。

 

個人でも比較的起業しやすい飲食店や不動産業等が典型的な業種。
地域密着型の小企業が存在しやすい。

 

 

(4)手詰まり型事業

競争変数が存在しない業界。

差別化も難しく、規模の経済性や習熟の経済性も効かないため、淘汰されずに残っているプレーヤーが、ほぼ同じコストで提供できてしまうような製品を扱っている。

 

日本のセメント業界等が例。

 

 

(5)アドバンテージ・マトリックスの留意点

①ある象限に属する事業は常にその象限にとどまっているのではなく、他の象限に移動する可能性

自社の属する業界がどのタイプかを見極めるだけでなく、そこから脱却するためのイノベーティブな発想をしてみることも大切。

理美容業界は分散型事業の典型で、地場密着の自営業的色彩の強かった。
しかし、1000円カットのQBハウスがフランチャイズ方式で画一的なサービスを展開し、ITに大きく投資することで特化型事業、規模型事業への転換を図った。

セメント業でも、メキシコのセメックス社は、独自のセグメンテーションとそれに応じた差別化戦略を打ち出すことで、手詰まり型事業から脱却した。

ja.blueoceanstrategy.com

 

 

 

②地域、特に国が変わると事業特性が変わる可能性

海外進出の際などに、自国の常識を無条件に当てはめないよう注意が必要。
製缶事業は日本では規模型事業の色合いが強いが、国土の広いアメリカなどでは分散型事業あるいは特化型事業の色彩が強い。

小売業などは、アメリカではウォルマートなど大手企業への集約が進んだ結果、規模型事業の色彩が強くなっているが、日本では規模型事業と分散型事業が混在したような状況。

gentosha-go.com

 

 

③全て産業が4つの象限のいずれかに属するわけではなく、中間的な存在もありえる

自社の規模や経営方針なども理解した上で意味のある分析を行うことが必要。

塾や英会話教室などは、個人営業の分散型事業の色合いの強いプレーヤーが多い一方で、規模の経済性を武器にして戦っているプレーヤーも少なくない。 

 

 

 

4.ポーターの3つの基本戦略と戦略グループ

3つの基本戦略

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ポーターは、企業が競争優位を築くためには、

 

①コスト・リーダーシップ戦略

②差別化戦略

③集中戦略

 

の3つの戦略があるとし、どれかに明確に舵を切ることが不可欠であると主張した。

 

 

①コスト・リーダーシップ戦略

幅広いターゲットをねらいつつ、コスト面で競争相手に勝つことに主眼を置く戦略。

事業経済性を勘案して、「同じ製品・サービスを提供するのであれば、最も低コストで提供する」ことを目指す。

通常は規模型事業や特化型事業の業界でNo.1の企業がこの戦略を採用することが多い。

代表的な企業としては、ファストフードのマクドナルド、家電販売のヤマダ電機、 セブン-イレブンなど。

 

②差別化戦略

幅広いターゲットを狙いつつも、低コストではなく、ユニークな付加価値を提供することで競合との差別化を目指す戦略。

フィットネスジムでは、ライザップが「結果にコミット」「マンツーマン指導」などを売りにして高価格を実現している。
対して、アメリカ発のカーブズは女性にターゲットを絞り、「30分」「予約不要」「スタッフも女性だけ」など、フィットネスを敬遠しがちな顧客層に対して利便性を売りにしている。

www.financepensionrealestate.work

コンビニ業界ではローソンが、健康や美容に配慮した商品を豊富に揃えることで特色を出している。

対して、ファミリーマートは異業種とのコラボ店舗を増やす等独自色を出している。

www.lawson.co.jp

 

 

 

③集中戦略

狭いターゲット(地域軸、顧客軸、製品軸等)に経営資源を集中し、局所的ナンバーワン、可能ならばオンリーワンを目指す戦略。

海外の格安航空券販売に特化していた創業初期のHIS。

ニュース番組に特化していた初期のCNN。

スポーツ関係の書籍・雑誌の出版に特化しているベースボール・マガジン。

 

差別化戦略は差別化の程度を強めると市場が縮小する傾向にあるため、一見すると集中戦略と見分けがつかない場合が多い。

高級車のフェラーリは、エッジの効いた差別化戦略とも、超高級車に絞り込んだ集中戦略とも捉えることが可能である。

 
重要なのはどちらなのかを厳密に特定することではなく、経営者がどのような意図でそのポジションを取ろうと考えているか、という戦略的な意図である。

 

 

3つの戦略の留意点

下記3点が留意点である。

 

①ある戦略が有効だとしても、経営環境が変われば有効性を失うリスクがある。

 

 

②ある戦略に舵を切ったからといって、他の要素をなおざりにしていいということにはならない。

差別化戦略をとった企業であっても、企業努力としてのコストダウンはある程度行わないと市場での競争力を持てない。

かつてのホンダは、似たような車種にもかかわらず部品が共有化できないなど、コスト削減が不十分であった。
デザイン性や走行性などの差別化は確かにできていたものの、トヨタの同ランク車に比較するとかなりの割高となり、販売面で苦戦を強いられた。 

 

 ③3つの基本戦略は有効である半面、トレードオフを過大に評価して、企業の挑戦心を失わせるおそれがある

経営学者のゲーリー・ハメルは、「あえてORではなくANDを目指せ」と指摘している。
大きな成功をねらうのであれば、コストでも差別化でも勝てということ。

 

 

戦略グループ

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多数の企業がそれぞれ全く別の差別化を実現していることは稀で、多くの場合いくつかの集団(=戦略グループ)にカテゴライズすることができる。

 

ポーターは、戦略グループ間の移動(=戦略変数の組み合わせを変えること)は容易ではなく、魅力的かつ競争の少ないポジションを築くことが重要だとしている。


移動の難しさは、新しい経営資源を獲得したり、従業員のマインドを変えることの難しさに起因する部分が大きい。

差別化戦略を追求している企業は、その戦略要素の組み合わせが、どの程度まねされにくいかを見極めることが重要。 

百貨店業界では、伊勢丹と三越、高島屋といった呉服系の百貨店は、高級感や丁寧な接客を打ち出して、ほぼ同じ戦略グループに属していたといえるだろう。

また、京王百貨店と小田急百貨店といった電鉄系百貨店も似たような戦略グループに属していた。

電鉄系の中では西武百貨店がPARCOを展開するなどして、ほかとは多少離れた位置にあった。

一線を画していたのはマルイで、ターゲットの若者重視、ファッション性優先、クレジットカード重視など、独自のポジションを取っていた。

nobuhiko-shima.hatenablog.com

 

 

タイムベースの競争

BCGは、スピードや時間短縮こそが重要な差別化要素となり、競争優位につながるという考え方(=タイムベースの競争)を提唱した。

 

日本の自動車業界や二輪車業界では、リードタイムの短さ等の時間短縮が競争上、非常に重要になっている。

時間短縮のメリットはコストダウンや顧客に対するベネフィットのみではない。

 

例えばアパレルで製品企画から製品を作り、店頭に並べるまでの時間を短縮できれば、流行を外す確率が下がり、売れない在庫を持つリスクや販売機会ロスを低減することにもつながる。

日本のユニクロ(ファーストリテイリング社)をはじめ、スペインのZARA(インディテックス社)などがSPA(製造小売り)の業態を採用している。

その背景には、流通の中抜きによるコスト削減だけではなく、クイックレスポンスによるタイムリーな品揃えや効率的な生産・調達をも意図している。

現場のみが強くてもタイムベースの競争はできない。

経営レベルでいかに素早くかつ効果的な意思決定を行うかが、近年では重要度を増してきている。

 

 

5.業界内の地位に応じた戦略

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(1)リーダーの戦略

①市場の拡大

市場というパイが大きくなれば、その恩恵を最大に享受するのはリーダー企業である。

そこでリーダーは市場のパイを拡大する行動を取る。

サントリーがウイスキーのおいしい飲み方を提案したり、ハイボールという比較的飲みやすい商品に力を入れたりすることで、若い人たちにウイスキーに親しんでもらうための活動を行っている。

 

 

②市場シェアの維持・拡大

・シェアを守り抜く

・さらにシェアを高めるために新商品開発や広告投資を増やす

などの攻めの活動を行う必要がある。

 

ビール業界におけるアサヒビールがその典型。

アサヒは新商品を次々と市場投入すると同時に、稼ぎ頭であるスーパードライについても、店舗で極限まで冷やしたビールを提供するなどのテコ入れを行っている。

 

 

(2)チャレンジャーの戦略

チャレンジャーは、リーダーの存在を脅かす意欲的な企業。

 

①リーダーとの直接対決

リーダーと差別化はするものの、比較的似た方法(チャネルへの営業や新商品開発、大規模な広告による露出など)で真っ向対決する。

シェアや企業体力の差がないケースでは一定の効果を持つ。

国内の携帯電話業界であれば、KDDIやソフトバンク。

 

 

②リーダーの弱いところを攻める

リーダーといえども逆転があり、社内的な事情で反撃しづらい部分も存在する。

リーダーとの規模の差がある場合は、直接戦いを挑んでも勝てる可能性は小さいので、攻め方を工夫することが大切になる。

ゼロックスコピー機業界の巨人ゼロックスに、相手が注力していなかった中小型機で新たな市場創造に挑んだ、かつてのキヤノンやリコー。

 

 

(3)フォロワーの戦略

リーダーやチャレンジャーから敵対視されることを避けながら、コストダウンや二番手商法(自社で市場開拓をするのではなく、リーダーらが切り開いてくれた市場で一定のシェアを確保する)で確実に収益を上げる戦略。

 

ただし、業界が成熟して競争が激しくなるにつれ、フォロワーの居場所がなくなっていく。

場合によっては大手とのM&Aなどにより、フォロワーの立場を脱するような戦略を打ち出すこともある。

典型的なフォロワー戦略の実行者と言われた三洋電機が、エレクトロニクス業界の競争激化に伴って他社に吸収されてしまった。

 

(4)ニッチャーの戦略

ポーターの3つの基本戦略のうち、集中戦略に近いもの。

自分たちの強みを生かせるセグメントを発見し、そこに経営資源をつぎ込むことで局所的ナンバーワンになり、競合の参入を防ぐ。

ただし、過度の集中はリスクも伴うため、ある程度成長したらニッチな市場を複数押さえるような努力も必要。

回転寿司のコンベアのパイオニアである石野製作所は、回転寿司向けコンベアのみならず、洗浄機や食品加工機器などに業容を拡大することでリスクの分散・低減を図った。

中小企業庁:元気なモノ作り中小企業300社:株式会社石野製作所

 

 

 

地位に応じた戦略に関する留意点

①ステレオタイプなリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーを前提としているが、現実には、それに当てはまらないケースもある。

売上規模ではリーダーであっても、必ずしも競争力に勝っているわけではないケースも少なくない。

自動車業界におけるかつてのGMがその典型。

規模は世界最大ではあったものの、規模の経済性が効きにくい構造になっており、またレガシーコストが高すぎる、

組織が官僚的すぎるなどの理由から、グローバルな競争力は弱かった。

2016年に合併したファミリーマートとサークルKサンクスも、合併後は店舗数でセブン-イレブンに近づいたが、追い越すことは容易ではないと考えられる。

 

 

②業界の定義を正しく設定することが必要。

戦略立案上意味のある業界設定はどのようなものなのか、日本国内での地位とグローバルでの地位のどちらが重要なのかなの意識が必要。

 

そもそも分散型事業のように、規模の競争がそれほど意味を持たない業界があることもある。

 

 

 

6.バリューチェーン

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バリューチェーン(価値連鎖)とは、事業分析の代表的フレームワークである。

企業が競争優位を構築する上でどのような活動をとっているかを分析するツールとして利用される。

 

具体的には、事業活動を機能・プロセスで分解し、どの機能で付加価値が生み出されているかを分析することで、事業のポジショニングにおける価値提供の源泉を探り、戦略の再構築や事業改善に役立てられる。

 

バリューチェーンのフレームワークでは、大きく5つの主活動と、4つの支援活動に別れている。

それぞれの活動の役割やコスト(付加価値)、そして全体としての競争戦略や成長戦略への貢献度を明確にし、そこからの戦略的示唆を得ることが重要。

 

競合に対する優位性に大きな影響がなく費用がかかっている機能については、その機能をアウトソーシングして外部資源の利用を検討するのが有効と考えられる。

差別化戦略をとる上で重要だが、同規模のライバルより劣っている機能があれば、投資を増やして強化することも有効である。


バリューチェーン分析で、成長のためのボトルネックを発見することもできる。

ある機能の人材獲得・育成が遅れていて全社的成長のボトルネックになっている場合、他機能の人員を配置替えする、採用のための投資を拡充する等の対策が求められる。

 

 

(1)定量分析とコストドライバー

バリューチェーン分析を行う際には、同時にコストの定量的な分析も行うことが有効。

 

さらに情報が手に入るのであれば、競合と自社のそれぞれについて、定性面、定量面での比較を行うと、提供価値や収益性の差異が把握でき、有効な示唆が得られる。

 

ポーターは、コストを規定する構造的要因をコストドライバーと呼び、整理している。

 

1.規模の経済(または規模の非経済)

2.経験曲線(ラーニング、経験の共有など)

3.範囲の経済(他の事業単位との活動の共有化、シナジーなど)

4.設備などの利用状況(利用度と固定費との関係、利用度の変化など)

5.連結関係(価値連鎖の最適化、サプライヤーや流通チャネルとの関係)

6.統合(垂直統合などによる「5つの力」の変更)

7.タイミング(先行者の有利、不利)

8.自由裁量できる政策(製品政策、技術・マーケティング手段の選択など)

9.要素コスト(原材料や労働力などの変化)

10.制度的要因(規制、法律、労働慣行などの影響)

 

これらのコストドライバーが自社のバリューチェーンにどう影響を与えるか定量的に把握することが重要。

 

 

(2)バリューチェーンの留意点

①どの事業について分析を行っているのかを明確にするこことが必要。

アマゾンは不特定多数の消費者を相手としたeコマース事業で有名。

一方で、BtoBのクラウドサービス(アマゾン・ウェブ・サービス:AWS)でも業界ナンバーワンとなっている。

複数の事業を持つことにより、範囲の経済性が働いているが、2つの事業を同じバリューチェーンの枠組みの中で分析するのは難しい。

 

 

②自社の提供価値にとって重要な活動は、漏れがないように必ず書き出すこと。

 

③個々の機能に着目するとともに、機能が鎖のようにつながって価値提供が行われているかを確認すること

たとえばR&Dも生産も営業も優秀な人材を揃えているのに、それぞれのベクトルがばらばらで、組織としての強みが発揮できていないというケース。

 

事業を支えるのは、最後は人間。

バリューチェーン間のコミュニケーションや交流などにも意識を向けておきたい。

機能間のコミュニケーション不足は地理的な距離の遠さに起因することが多いため、異なる機能の人員を近距離に置く会社もある。

 

 

 

(4)バリューネットワーク

バリューネットワークとは、業界のバリューチェーンに近い概念で、川上から川下に至るまで、自社を含めどのようなプレーヤーがいて、どのような生態系が形成されているかを示すもの。

近接する業界からの脅威に備えたり、自社の新しい成長を模索するうえで重要。

 

自社業界だけでなく関連業界を含むプレーヤーとの関係を把握することが重要である。

パソコンのバリューネットワークにいるプレーヤーは、パソコンのことだけを考えがち。

しかし、パソコンはかなりの部分、タブレットやスマートフォンに置き換えられている。

パソコンのバリューネットワーク上では王者であったマイクロソフトやインテルは、パソコンという商材が代替されるに従って、そのプレゼンスを失いかねない状況である。

 

 

 

(4)ビジネスプロセス・リエンジニアリング

ビジネスプロセス・リエンジニアリング(BPR)とは、企業などで既存の業務の構造を抜本的に見直し、業務プロセス(ビジネスプロセス)を最適化・再構築すること。

BPRが提唱された背景には、バリューチェーンの主たる機能や、そのサブ機能が過剰に分業されすぎたことへの反省がある。

高度な分業化によって個々の専門性は高まったが、全体では業務効率が悪化し、顧客に対して価値提供が適切にできない、コスト高になる等の問題が生じる。

 

BPRでは、企業の業務プロセスを、顧客に対する価値提供を効果的に行うという観点から再構築する。

その結果、業務スピードの向上、人件費などのコスト削減、さらに競争優位の創出が可能になる。


ITを活用するのが一般的。

ITは情報やナレッジの共有、プロセスの可視化などに不可欠

それをパッケージ化したものが、ERPソフトである。


BPRは適切に行えば大きな効果が期待できる。

 

しかし、ある調査によると、不連続的な変化に組織がついていず、儲けたのはコンサルタントとITベンダーだけで、70%以上は失敗に終わったという報告もある。

いきなりBPRに飛びつくのではなく、その前提となる戦略の方向性や、期待する費用対効果、またBPRの障壁となる組織の慣性をあらかじめ理解しておくことが必要不可欠。

 

 

 

 

以上が、第1章「事業経済性の活用」のまとめになります。 

 

 

最後に 

この記事でまとめている書籍、「グロービス MBA経営戦略」ですが、非常に各戦略論の内容が関連づけて綺麗にまとまっており、非常に理解しやすいです。

 

事例も豊富で非常に実践的!

 

まずはこの本から経営戦略の土台を学び、より詳細を知りたくなった個別戦略論やフレームワークについては別書籍で続けて学んでいくのが良いかと思います。